47 青色申告者のための貸借対照表作成の手引き
国税庁のこの解説の6ページ以降に記帳の具体的な例があります。
といっても、
取引例と完成した帳簿の合計が全く一致しないし同じ日に複数の取引をしているので、そこは勝手に修正してGnuCashでやってみます。
ややこしいので消費税はないものとします。
取引例
1/4 現金180,000円をメロン銀行の当座預金に預け入れた。
1/5バナナ商事からA商品(日用品:単価1,200円)300個を掛買いで仕入れた。
1/6 封筒を購入し、現金2,500円を支払った。
1/7
マスカット商会の売掛金700,000円を小切手で回収し、メロン銀行の当座預金に預け入れた。
1/8
バナナ商事から1月5日に掛買いで仕入れたA商品(単価1,200円)20個を返品した。
1/12
マスカット商会へB商品(日用品:単価2,500円)200個を掛売りで販売した。
1/14
マスカット商会から1月12日に売上げたB商品(単価2,500円)10個が返品された。
1/16
マーマレード商事から商品(日用品)を300,000円仕入れ、小切手で支払った。
1/18 商品(日用品:単価1,200円)を50個仕入れ、現金60,000円を支払った。
1/25 事業用の現金200,000円を生活費として家計に渡した。
1/26
買掛金386,000円の支払いのため、バナナ商事に現金36,000円を支払い、残りの350,000円は手形を振り出した。
1/27 マスカット商会の売掛金400,000円を手形で回収した。
1/28 受取手形400,000円が決済され、メロン銀行の当座預金に入金した。
1/29 支払手形350,000円が決済され、メロン銀行の当座預金から引き落とされた。
1/30 1月分電気料金45,000円がメロン銀行の当座預金から引き落とされた。
3/31 火災保険1年分105,000円を家計費から支払った。
8/1 メロン銀行普通預金の利息13円がついた。
9/1 店舗用シャッターを600,000円で取り付けたが代金は未払いとなっている。
10/15 商品(食料品:単価5,000円)を10個売上げ、現金50,000円を受け取った。
12/20 12月分電話料金20,000円がメロン銀行の当座預金から引き落とされた。
12/26 受取手形300,000円が決済され、現金を受け取った。
12/27 支払手形550,000円の決済のため、現金550,000円を支払った。
12/28 マスカット商会の売掛金250,000円を現金で回収した。
12/31 電話料金の40%を家事按分で除外した。
12/31 店舗用建物を償却期間12/12で248,400円を償却した。
12/31 店舗用シャッターを償却期間4/12で9,200円を償却した。
12/31 売掛金の5.5%を貸倒引当金にした。
12/31 期末商品棚卸高 381,400円を棚卸資産に振替。
○○とか△△とか入力しにくいにので適当な名前に置き換えています。
日付もなるべく重ならないようにしました。
12/31でやっている固定資産の減価償却費用の算出は国税庁の確定申告書等作成コーナーで計算するのが簡単です。
確定申告書等作成コーナーから入って青色申告決算書の入力画面の「減価償却費」をクリックすると減価償却資産の計算ができます。
12/31 の貸倒引当金は青色申告事業者の上限の5.5%に設定しています(No.2070 青色申告制度|所得税|国税庁)。
前期からの棚卸資産と期末商品棚卸高は例よりも1桁減らしています。
取引例から追加が必要な勘定科目と開始残高を調べる
GnuCashで青色申告用の勘定科目を作成する-p--qで作成した勘定科目ファイルを元にするので、それに追加しないといけない勘定科目をリストアップします。
追加科目
資産:当座預金:メロン銀行
資産:その他の預金:メロン銀行
資産:売掛金:マスカット商会
資産:建物:木造店舗
負債:買掛金:バナナ商事
他に、資産:建物附属設備:店舗用シャッター、という科目がありますが、期首には存在しませんので最初は作りません。
開始残高
資産:現金 531,272
資産:当座預金:メロン銀行 576,000
資産:その他の預金:メロン銀行 133,000
資産:売掛金:マスカット商会 1,172,000
資産:棚卸資産 370,500
資産:建物:木造店舗 4,882,200
資産:受取手形 300,000
負債:支払手形 250,000
負債:買掛金:バナナ商事 1,672,000
負債:貸倒引当金 64,460
開始残高は手引きから一部改変して決めました。
特に現金と受取手形と支払手形は負数にならないように開始残高を設定しています。
元入金は開始残高をすべて入力すると算出されます。
これで入力する元データが揃いました。
これらをもとにGnuCashに入力していきます。
開始残高を入力する
取引の入力の前にまずは各口座の開始残高を入力します。勘定科目はGnuCashで青色申告用の勘定科目を作成する-p--qで作成済なので、ここから青色申告勘定科目.gnucashファイルをダウンロードして、これようのフォルダに入れてからGnuCashで開きます。
勘定科目を追加する
資産:当座預金:メロン銀行を作成します。
勘定科目タブで資産:当座預金を選択して新規ボタンをクリック。
勘定科目タイプは「銀行」を選択しました。
開始残高タブで開始残高と日付を入力します。
資金移動させる勘定科目には元入金を選択します。
資産:当座預金:メロン銀行は借方科目になるので、このように開始残高は借方(Debit)に入っています。
他の口座も同様に開始残高を入力していきますが、貸方科目では開始残高は貸方(Credit)に入ります。
すでに科目がある口座についても同様に開始残高を入力します。
開始残高を仕訳帳で確認する
ツールー> 一般仕訳帳。
デフォルトではフィルターで一部の取引しか表示されないのでフィルターを解除します。
タブ内の表の中で右クリック ー> フィルター。
「すべて表示」を選択して「OK」。
資産は借方(Debit)、負債は貸方(Credit)に値が入っていることがわかります。
摘要に「開始残高」と入力されているのは新規勘定科目作成ダイアログで開始残高を入力したものです。
期首の賃借対照表を出力する
確定申告には期首の賃借対照表が必要なので、開始残高を入力したらまず賃借対照表を出力しておきます。
「賃貸不一致-JPY」と「不明-JPY」という科目は入力中に自動で作成される科目なので、合計が0であることを確認したら削除しておきます。
帳簿 ー> 実験中 ー> 貸借対照表(複数列)。
罫線はGnuCashをインストール後の設定-p--qで設定しましたが、まだ見にくいのでオプションを設定します。
オプションボタンをクリック。
勘定科目タブでは「すべてを選択」をクリックします。
「子勘定科目の階層」は2にします。
表示タブでは「Parent account amounts include children」(子勘定科目の合計を親勘定科目に表示する)と「Include totals」(合計を表示する)の2つだけにチェックをつけます。
全般タブでは、帳簿名を「貸借対照表(期首)」にします。
Disable amount indentingとEnable dual columnsの両方にチェックします。
終了日付には期首の日付にします。
これで期首の貸借対照表ができました。
元入金は5,978,512円になっています。
通貨記号は消したいのですがやり方がわかりません。
「設定を保存」ボタンをクリックすると帳簿の設定が保存され、次回からは帳簿 ー> 保存済み帳簿設定、で帳簿が出力できます。
仕訳帳で取引を入力する
ツール ー> 一般仕訳帳。
仕訳帳だと「スプリット」を気にせず打ち込めるのでいいのですが、たくさんの勘定科目のリストから科目を選択するのが少し面倒です。
科目コードを打ち込んでも科目は選択できませんが、インクルメンタルサーチが効きます。
科目名は「genkin現金」みたいにローマ字を先につけておくといいかもしれません。
帳簿にはローマ字を表示させたくなければ補助科目にだけローマ字を付けておくとよさそうです。
資産と経費が増えるときは左側(借方)に金額を書き、あとは釣り合うように右に金額を書くという感じでやっています。
次期の元入金
勘定科目タブはこのようになっています。
最後の行の「利益」は収益と経費の差で、この例では赤字になっています。
最後の行の「純資産」は資産と負債の差です。
資産+事業主貸=負債+事業主借+元入金+利益
賃借対照表を見ればこの等式が常に成り立つことがわかるので、この式から次の式が成り立ちます。
資産−負債=元入金+利益+事業主借-事業主貸
この右辺は次期の元入金なので、最後の行の「純資産」は次期の元入金と等しくなるはずなのですが、今回の科目設定では資産と負債にそれぞれ事業主貸と事業主借を含めてしまっているのでそうはいきません。
(真の資産+事業主貸)-(真の負債+事業主借)=元入金+利益
実際はこうなっているので、最後の行の「純資産」から次期の元入金を算出するには次のようにしないといけません。
次期の元入金=最後の行の「純資産」+事業主借-事業主貸
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